8月10日(土)に伊那公民館の講堂を会場として、「ヤングケアラーのことをみんなで学ぶ研修会【きょうだい児・きょうだい編】」を開催したところ、当事者やご家族、教育・福祉・行政関係者、民生委員児童員委員や主任児童委員、子ども食堂等に取り組む団体等、約100名の方が会場・オンラインに集まって学びました。
【きょうだい児・きょうだい】とは、障がいをや慢性疾患のある人の兄弟姉妹のことで、兄弟姉妹として直接的な世話や介護を求められるだけではなく、親は障がいのある子どもにかかりきりになってしまうことから、きょうだいは親に甘えることができずに、寂しい思いから自己肯定感が低くなったり、きょうだいを理由として結婚を断られるなど、幼少期から青年期の幅広い年代において課題を抱える場合があり、ヤングケアラーと重なる部分もあります。
研修では長野県県民文化部こども若者局次世代サポート課の職員の方から、令和4年度に実施した実態調査の結果、「お世話をしている家族がいる」と答えた小中学生が全国平均を上回っていることが報告され、こうした方々の相談を受け止めるための相談窓口として、県社協にヤングケアラーコーディネーターを配置するとともに、市町村のヤングケアラー支援相談窓先を県HP掲載していることの案内がありました。
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基調講演として、「ヤングケアラーの理解にむけて ~きょうだいの視点から~」をテーマに『きょうだい児と家族の応援団 にじいろもびーる代表の有馬桃子さん』にヤングケアラーの中でも特に気づかれにくい、きょうだいの視点からお話しをいただきました。講演の中で、きょうだいは「家族なんだからやって当たり前」、「親や周囲に言われなくても、私が世話をして当然」と障がいのある兄弟姉妹や親・周囲の期待を優先し、自分の思いや気持ちを抑圧したり、遠慮や背伸びしていることがあることを話され、当時を振り返り、【自分の状況が分からない、言えない、伝えられない】ことを話されました。
こうした思いを受け止めるためには、まず周囲の人が「きょうだい」の存在を知り、障がいや病気のある人と家族の状況を理解し、障がいのある当事者だけではなく、きょうだいや親御さんへのケアも重要で、それぞれの立場で目の前の家族を応援し、社会全体で支えていくことが必要だと話されました。
シンポジウムでは、きょうだいの当事者、きょうだいの母親、地域の居場所支援者のそれぞれにご登壇いただき、思いをお聞きしました。
きょうだい当事者の『南信州きょうだいの会 こたつむり 代表の相澤純也さん』は自身の生い立ちを振り返るなかで、それまで感じていた不安や孤独感を「きょうだい」という言葉に出会うことで解消され、同じ悩みを抱えるきょうだい同士が気軽に話をしたり相談することができるための交流会やきょうだいの理解を広めるための映画上映会を実施されたことをお話しされました。
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きょうだいの母親の『産業カウンセラー 小口智世さん』は自分自身も人前で話をしたり、運動するのが苦手だったと振り返り、抑うつ状態の経験から、カウンセラーとして仕事をするなか、2人兄妹の妹が発達障害の診断を受けたことで、繊細な兄も併せて二人が不登校になり、子どもに対して、「学校だけが学びの場ではない」と子どもの思いを大切にしながら、不登校の子を持つ親同士話ができる場として「Toiro Base」で「行きしぶり・不登校の子どもを持つ親のおしゃべり会」を立ち上げたご経験を話されました。発表の中で、日本の考えは世界から見ると当たり前ではなく、家族にケアを求める社会や家族のことは家族でみるという考え方は、社会の構造が影響していることを理解することが大事と話されました。
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地域の居場所支援者の『居住支援法人 Toiro Base 管理責任者兼相談員の清水彩夏さん』は法人のよろず相談の場面で住居確保に関する相談が多いことをきっかけとして、居住支援法人の指定を受け、入居支援の場を活用した子ども支援の取り組みを発表されました。発表の中で、相談窓口があっても子どもたちが直接相談することは難しく、子どもたちが何気なく来た場所での関わりを通してつぶやく「声」をひろって必要なところへつなげており、安心して話をすることを通してスッキリしてもらうことが重要だと話されました。
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研修全体を通して、「ヤングケアラー」や「きょうだい」と状態や境遇で対象に捉えるのではなく、「地域に住む子ども」としてゆるりと受け止め、そんなこども達にまずは信頼してもらえるような大人になるためにそれぞれの立場で考えていくことが大切であることが学びました。
また、居場所とは物質的な部屋や建物だけではなく、「安心して話を聞いてくれる存在」も居場所であり、何をしてもしなくても良い場所も重要で、子どもも大人も大切にされていることが実感でき、ありのままが認められる社会を目指していくことが重要であることを学びました。
研修の参加者からは、「自分が思っていたよりも家族のケアを担っているこどもの数が多くて驚いた」、「『きょうだい児』という言葉をはじめて知り、ご家族の思いや苦労を学んだ」、「こども食堂などのピアサポートの取り組みが居場所になっていて素敵。こうした取り組みが他の地域にも広がってほしい」といった感想をいただきました。今後もこうした学びの場を継続して創っていきたいと思います。
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